
400余年伝わる曲物(まげもの)づくり。
木曽漆器のひとつである曲物は
暮らしに密着した私たちの生活道具です。
「良いものは長く引き継がれる」を実感できる、
日本古来の便利な道具のひとつです。
曲物(まげもの)は木を曲げて縫い合わせた器もの。
曲物(まげもの)とは、薄い木の板を円形や楕円形に曲げて、合わせ目を「山桜の皮」で綴じて底をつけた器ものです。
使う材料は、御岳山ろくに育った木曽ヒノキと木曽サワラ、それに山桜の皮だけの天然素材。
木曽漆器の代表でもある、そばせいろや弁当箱も曲物であり、ここに漆が重ね塗りされています。
曲物づくりの本場もまた、木曽漆器とおなじく旧木曽の楢川村で、木曽路・中山道の北の入り口に位置します。
400年以上の歴史を持つ、古来より木曽の人々の生活に溶け込んだ道具です。
軽くて丈夫で使いやすく、国産の天然素材を使用していることで、プラスチック製品が広く使われる現代でも人気をよんでいます。
木曽ヒノキを使っています。やっぱり品質がいいのです。
木曽の曲物には、材料に木曽ヒノキが使われています。天然の木曽ヒノキは曲物づくりに最適です。
昔から「家を建てるなら木曽のヒノキで」と伝わるほど、木曽産のヒノキは材質がいいと言われます。理由は、木曽ヒノキは堅くて弾力があり、木目が緻密であること。
木曽の気候は夏でも冷涼で、昼夜の寒暖差が激しいため、ヒノキの成長をゆっくりと堅牢にしているのです。同じヒノキでも、暖かい地方で育つヒノキとは堅さと密度が違います。また、香りが良く光沢があり、虫を寄せ付けないから保存がきくことも良い条件として挙げられます。
伊勢神宮の社殿を20年ごとに新しく造営するとき、かならず木曽ヒノキを使います。
ヒノキの薄板を曲げるときにも、薬品や塗料などの化学品は使いません。
熱湯に浸して柔らかくしたあと、器具を用いてゆっくり曲げます。
「良い素材を良い条件で仕上げる」。先人たちの教えを守り、安全で安心な製品づくりを心がけています。
器の「フタ」と「底」は木曽サワラ、綴りは山桜の皮。
木曽サワラはヒノキよりも吸水性が高く、古来より寿司桶やおひつ(電気炊飯器のない時代、釜や土鍋で炊いたごはんを移しておく入れ物)の材料に使われました。
ご飯の蒸気をほどよく吸い取り、つゆをご飯に落とさないためです。木曽の曲物もフタと底の部分は、ヒノキでなく木曽サワラを使います。ヒノキよりも重量感があり、堅さがあるのも理由です。
曲げたヒノキを綴るときには、山桜の皮を使います。桜の皮は見た目にも美しくて丈夫、また水分を含むと締まるのが特徴です。ナイロンやビニール、皮革製のヒモなどは、濡れると伸びてしまいます。桜の樹皮は湿気のこもる弁当箱などには最適なのです。
このように適材適所、素材の良いところを使って曲物は作られています。
曲物ちょっと小咄(こばなし)。
曲物づくりは、山仕事をする人々が弁当箱のようなものを作ったことがはじまりと言われます。昔は木曽に暮らす人々の多くが山仕事に従事していました。
男たちは山仕事に出かけ、道具の鉈(なた)一丁でヒノキを切り、まだ水気の残るヒノキを曲げてまずご飯つぶで糊づけし、山桜の皮を細くこそいで綴じ上げたのだと言います。
これが曲物の弁当箱のはじまり。
もちろん言い伝えによるものですが、実に信憑性のある話です。
まだ大量生産できる既製品の弁当箱がない時代も、山仕事をする人々の昼ご飯は山の中。
食事を運ぶ容器を自分たちの手で作り上げたのでしょう。
先人たちは樹木の特性を熟知して、素材を選び作ったのだと思います。
「おばあちゃんの知恵袋」ではないけれど、昔の人はいろいろな知恵を授けてくれます。
さらに新しい物や素材が増えて、暮らしを便利で豊かなものにしてくれます。
新しいものは生活するのに「便利」だから生まれます。
昔からあるものは「本当に良いものだから」今に存在し続けているのだと思います。
永く熟考されて、安心と安全を考えた400年続く曲物づくり。
本当に良い物だから、いまに引き継がれています。
木曽ショッピングサイト「木曽ショップ」のお知らせ
当駅の姉妹サイト「木曽ショップ」では、ここでご紹介した当駅のオリジナル商品や取扱い商品のほか、木曽の銘酒や木曽漆器などの木曽特産品や、百草丸・健康茶など御岳山にちなんだの商品などもご購入いただけます。木曽ショップでご購入いただくとポイントが付いて更にお得なお買物をお楽しみいただけます。

道の駅 日義木曽駒高原 「ささりんどう館」/長野県木曽郡木曽町日義4730-3(国道19号線沿)
TEL:0264-23-3644 FAX:0264-23-3645 営業時間:8:30~17:30(冬期12/1から3/31 9:00~17:00)